休日は首都高500円、地方1000円 高速道路料金値下げ案
土日祝日は大都市圏を除く地方部で終日、普通車でどこまで走っても上限1000円の乗り放題とするほか、首都高、阪神高速について700円区間を500円とする(ただし、首都高は土曜日を除く)。
概ねネット上では、好意的に見られている1000円乗り放題。
私も個人的は嬉しいニュースであるけど、画角を少し広げて読み返すと色々と不安がよぎる。
時期が時期だけに、景気浮揚策の一つとして考えられていると思うが、果たして景気対策になるのだろうか。
毎年、野球で「○○が勝ったら経済効果○○億円」という話題が出るが、あれに近い印象を受ける。
巨人が勝とうが中日が勝とうが、経済効果は発生するわけで、どの球団に関係する商圏がその効果の恩恵を受けるか?の違いにすぎない話、つまりはパイの受け手が変わるだけの話なんだけど、今回の1000円乗り放題にも似たような話じゃないのだろうか。
高速道路が安くなったと言ってもカレンダーに土日が1日増えるわけじゃない。
休日の行き先が変わるだけだ。より遠くへ出掛けるようになるだろう。
消費者の行動範囲が広がるわけで、施設の側から見たら商圏が広がることを意味する。
集客力のある施設には更に大勢が集中し、集客力の弱い施設は更に弱くなる。
スーパーの歴史でも分かる。
車が普及していなかった頃は、半径1〜2km範囲ごとくらいに小規模な商店があったが、車の普及に従い、そういう集客力の弱い商店は完全に淘汰された。
半径5〜10km範囲ごとに(集客能力のある)スーパーが作られ、商店にとって変わった。
速い速度で走れる道路の普及に伴い、20〜30km範囲ごとに大型スーパーなるものが出来つつある。
同じ話は観光地でも言える。
人気のある観光地へは更に人気が集中し、そうじゃないところは益々閑散とする。
高速が1000円であっても、ツマラナイところへ行かないものだ。
「ヨソへ行きたいけど金が多くかかるから近くのツマラナイところで我慢」という消去法的な選択がなされ生き延びていたところへ客が集まるはずがない。
集客力のある観光地とその周辺のごく限られた土産物売り場だの食堂だの、それらだけは特需が見込まれるが、そうじゃないところは更に逆に寂れるだろう。
往復の高速代が1万円から2000円になって8000円浮いたところで、その8000円を余分に使うはずはない。
1万円にしろ2000円にしろETCを通じてクレジット決済されるものだから、財布の中の現金が変わるわけじゃない。単に「交通費が安くなって良かったね」で済まされる話であり、以前と同じ額のお金を以前より遠い地方で使うようになるだけ。
更にもう一点、見逃せないことがある。
「料金引き下げの必要経費は5000億円」を税金で補填するという点だ。
高速道路会社の企業努力で捻出されるわけじゃない。
古今の情勢で交通量が激減している高速道路会社の経営支援!?と穿った見方も出来る。
1億人で割ると一人あたり5000円。4人家族で2万円の税負担。
各家庭に対し2万円相当の負担を強いて「1000円乗り放題」を実行するのである。
高速道路会社は遺失売上を税金で補填してもらえるので、全く痛くないだろう。
結局のところは、儲かる観光地と儲からない観光地との格差が広がり、タコが自分のアシを食べて得した気分に浸る、そんな制度に思えてならない。
タコが自分のアシだと分かって食べずに残していると、そのアシは他人が食べてしまう。今の社会はそんな感じだ。
追記
第2次補正予算が成立 してしまったらしい。