チェルノブイリ原発の管理棟前が住めない理由

 世界には 0.5μSV/h を越える地域もあり、普通に人々が暮らしています。
 反面、似たような 0.51μSV/h のチェルノブイリ原発の管理棟前は人が住めません。


 なぜか?
 この手の話題に必ず登場するイラストを挙げて説明します。


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 インドの西海岸だとかブラジルのバラパリだとか、世界の高線量地域は、このイラストでいうところの、「大地から」という部分が日本などより高いです。
 地下に放射線を出す岩盤(花崗岩質だったりウランを含んだ岩盤)が原因なのですが、その岩盤から石ころ一つ取り出して調べてみても大した放射線量ではないのですが、そういう岩石が地下何十メートルにも渡り大量に存在することで地上の空間線量を押し上げています。


 チェルノブイリ(福島)の場合、これら地域とは放射線の素性が違います。


 宇宙線は世界全体で同じですし、海に囲まれ雨に恵まれた日本故に空気中のラドンは多めながらも、福島では地下に放射線を出す岩石がなく、事故前までは精々 0.05μSV/h 程度と極めて低い空間線量の地域でした。
 それが事故によって大きく変わったのですが、どこが変わったのか? 分かりやすいようにイラストに加筆しました。


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 赤い粒々が地面に広がっているのが分かりますか。
 この赤い粒々が発する放射線のせいで、地上1mの空間線量を 0.56μSV/h にまで押し上げています。 


 この粒は人の目には見えませんし臭いもしません。
 ガイガーカウンターなどの線量計をかざすことで「粒がありそう」ということが分かるくらいです。


 もともと自然放射線が高い地帯と違って、放射線を出す粒が表層わずか数センチ〜数十センチ(〜数メートル)に散らばっていて、岩石由来の場合と比べれば総体積としては僅かながらも、粒が発する遙かに強烈な放射線により地上1mが 0.56μSV/h になっています。

 
 この粒々は地面に固着しておらず、強い風が吹く度に粒々が含まれた砂塵が空気中を舞いますので、これらのチリが発する放射線も 0.56μSV/h の測定値の中に含まれており、福島県原子力センター福島支所の屋上の高さ以上に吹き上げられた(そして降下してきた)分の量は 福島県が発表する定期降下物 で見ることが出来ます。


 ここが世界の高線量地域と決定的に違う部分です。
 強い放射線を出す部分が主に表層の粒なのが福島、分厚い岩石層なのがガラパゴ  


 線源との距離が2倍になれば放射線が 1/4 になる特性がありますが、反対に線源との距離が半分になれば4倍、1/10になれば100倍にもなるのが放射線
 地面の粒々から受ける放射線の強さは、地面から靴底の厚みの分だけしか離れていない足の裏は地上から1mにある胴体と比べて比べて、約1万倍(靴底1cmの場合、1cmは100cmの1/100なので2乗の1万倍)の被曝をします。
(足の裏に限っては被曝に強いという理屈はありません)


 「足の裏くらい・・・」って言う人もいるかもしれませんが、粒々が地表から離れることなく完璧な密着が保証されていれば、確かに「足の裏だけ」になりますが、実際には違います。


 この濃厚な粒を含んだ埃や塵は大気中を舞い、人が吸い込みうる状態で放置されています。
 放射線の強さは距離の2条に反比例するので、体の中に放射性物質が取り込まれると、数ミリ〜数μミリの至近距離から強烈な放射線を細胞が浴びることになります。


 いつの間にか空間1m地点の値だけで安全が語られるようになってしまっていますが、地面に立って防塵マスクなしに空気を吸う生活をしている限りは、1m地点の空間線量などに全く意味がないのです。
 明らかに住めない場所をスクリーニングすることができるだけで、住める場所かどうかは地面を測るまで分かりません。

  • 靴底に鉛板を入れて足の裏の被曝を保護
  • 生殖器を保護する鉛フィルムを編み込んだズボンや腹巻き
  • 埃や塵の吸引を防ぐ完璧な防塵マスク


 こういう格好で生活することが現実には不可能だから、チェルノブイリでは管理棟の前はおろか、原発敷地の外の空間線量 0.2μSV/h 地帯も居住不能にしました。
 空間 0.1μSV/h でも居住禁止が永久に解けない、とされています。


 空間線量の数値に全く意味がないからです。


 「地面に直置き」で測って十分に低い値を示す場所でない限り、人は住めません。