謝り上手な人

 うちの会社は一般消費者との接点がなく業者が取引相手なので罵声混じりのクレーム電話は全くゼロの ぬるい 環境なので、どうしても”謝り方”が上達しない。


 反面、お客さんで、噂の中国から雑貨を輸入しているメーカーさんは、消費者向けの客セン(クレーム等を受け付けるお客様窓口)を開設していることもあって、そういうクレーム電話の応対も日常業務だ。


 そういうトコに出向いた際には仕事もソコソコに、もっぱらクレーム電話の応対を盗み聞きしている。
(盗聴しているわけじゃないけど、受話器から相手の声が漏れ聞こえることも多いので・・・)


 手強そうなクレーム応対は基本的に部長さん級がやられているのだけど、いつもながら見事としか言いようがない。


 全面的に争う姿勢を見せることもなく、逆に平伏すこともなく、罵声とどろく相手の言葉の中から「正しいことを言ってる部分」と「言いがかり的な部分」とを聞き分け、謝るべき点は謝り、相手に歩み寄るべき点は歩み寄り、だけど譲れないラインは譲らない。
 直販メーカーじゃなくて中間に問屋さんとかが絡むので、そこら辺の利害関係者の立場をも思いやる。
 クレーム応対と言ったら”ババ抜き”のような感じになりがちであるが、そういう「(自分含めて)誰かが決定的な敗者になる」とならないよう、軟着陸できる地点を模索しながら、更に言葉を選び、だけどその言葉の数々は前後がちゃんと繋がり全体として矛盾点を生じさせてない。
 相手が次に発する言葉を予想し、時にはそれとなく導き、かと言ってその誘導線を相手に悟られることはない。


 人間だれしも失敗して謝らないといけないことがある。
 単なる「ごめんなさい」の連呼は意味がないし、謝罪=全面降伏(相手の言いなり)という訳でもない。
 もちろん、逆ギレして冷静さを失うなんて論外だ。


 この辺が「人の器」たる部分なんだな、と常々思う。
 行くたびに、後学のため、と思い密かに聞き耳を立てる自分。
 その部長さんの域には全く及ばない。