M51957B を用いた自動回復型なシンプル過放電防止回路
5年も前に書いた過放電防止回路の記事 へのアクセス数が未だに一定数あるのですが、その当時に 秋月扱いの M51957B じゃなくて、その反対の挙動である M51958B がお薦め、みたいな感じでまとめました。
しかし M51958B の RS-ONLINE での扱いは終了し、今では本物かどうか若干の不安が残る品を aliexpress でポチらないと手に入りません。
実は M51957B を用いて部品点数が少ない過放電防止回路の例を 独立型太陽光発電 に UPS を華麗に組み合わせる(応用) の中で紹介させて頂いたのですが、私の用途的に 48V を対象にしていたことや、UPS 制御を主眼にしていたため、普通に 15V 以下で使うには若干の読み解きが必要になってました。
2〜17V 付近をターゲットにした最もシンプルな過放電防止回路
という風で今一度まとめなおしてみます。
M51957B のほかに、Nch-MOSFET 1つ、抵抗数本 で出来上がりという、恐らく最もシンプルな回路かなと思います。
過放電検知電圧・復帰電圧は R1〜R4 の抵抗で決定します。
型番の書かれてない右側の Nch MOSFET は負荷の消費電流などを加味したうえで選定して下さい。
ローサイド切り替えなので、供給側と負荷側で GND は別物という意識づけを徹底しないといけません。
意味が分からないという人は、次項のハイサイド型を選択しましょう。
使う部品が2つ増えますが、考えるべきことが1つ減ります。
■ハイサイド切り替えの時
電源側に Pch MOSFET を配置し、そのゲートを小型の Nch MOSFET で制御することでハイサイド切り替えします。
GND が共通で良くなるので、信号線のやりとりをする場合でも考えることが減ります。
MOSFET の部分をリレーに置き換えただけです。
R1〜R4 の選定で、過放電防止が作動する電圧、および復帰する電圧が決定されます。
計算式はかなり複雑です。
off→on 電圧 | Von=1.26×(1+R1÷1/(1/R2+1/R4) | |
on→off 電圧 | Voff=1.25×(1+1/(1/R1+1/(R3+R4))÷R2) | |
最小ゲート電圧 | Vgsmin=(Voff-1.25)÷(1+R3÷R4)+1.25 | 使用するMOSFETによるが ≧2.0Vは必須 |
最大検電電圧 | Vcmax=Vmax×(1+1/(1/R1+1/(R3+R4))÷R2) | |
最大ゲート電圧 | Vgsmax=(Vmax-Vcmax)×(1+R3÷R4)+Vcmax | <18V(M51957Bの耐圧) |
※Vmaxは想定最大バッテリー電圧
代表的な抵抗値を使ったときの計算結果を エクセルにして置いときます ので、自分の希望値を条件にフィルターして選定して下さい。
残る定数 C1 ですが、こいつで瞬停への許容度を決定します。
M51957B は、とても優秀なリセットICで、一瞬の瞬停も見逃しませんが、バッテリーの過放電防止に使うにあたっては、そこまでシビアに低電圧検出をする必要がありません。
瞬停と書くと、バッテリーは瞬停しないよ・・・って言われると思いますが、負荷が ON になった瞬間や、消費電流が大きくなったとき一瞬だけ電圧降下しちゃったりします。
そんな一瞬の電圧降下であっても「おっと過放電を防止しなきゃ」と言って発動してしまいます。
負荷側にモーターがあったりすると、まず確実にアウトでしょう。
そんな一瞬の電圧降下を誤魔化すための部品が C1 となります。
データシートによると
td ≈ 0.34 × Cd(pF) μs
とあります。過放電で使うなら単位は μs じゃなくて ms のほうが都合がいいと思うので変換すると
td ≈ 0.34 × Cd(nF) ms
となります。
1μF(1000nF)で 約340ms、10μF(10000nF)で 約3.4秒が計算上の値になります。
あと、一過性の電圧降下の影響が M51957B の電源にも及ぶ場合、電源ラインをバッファする手段も必要になるかもしれません。
右図のように、抵抗(またはダイオード)を介して電源を取り、途中にパスコンを挿入します。
この抵抗は、電圧降下時にパスコンに溜まった電気を負荷側に取られないようにするためのものです。
抵抗値が多いほうがバッファリングの効果も高くなりますが、M51957B の消費電流に見合って V=IR の電圧降下を生じさせてしまう諸刃の刃なので、特に低電圧域で使う時はパスコンの容量増で対応したほうがいいと思います。