仕事の用事で名古屋駅の近くに出向く機会があり、つい先日オープンした 名古屋ルーセントタワー の脇を歩いた。
特別な用事はなかったのだが、中部地方有数の企業群がこぞって入居したという有名なタワー。どんな会社が入ってるのか少しのぞいてみた。
トヨタを始めとして有名企業の名前が並ぶ中、見覚えのある会社名が目に入った。
およそ10年ほど前、当時、私と一緒に仕事をしてた同僚が興した会社の名前である。
ルーセントに入る前も、それなりに小奇麗でモダンなビルに入っていたのだが、まさかルーセント開業と同時にフロアを設けた企業群の中の一社になっているとは想像もつかなかった。
上場もしていないし世間一般では有名でないけど、JASDAQくらいには近々上場できそうな、そんな位の規模にここ数年間で急成長を遂げている。
彼は当時、少しばかりズルイ手口で会社を辞めて事業を興したこともあって、未だに彼自身も私と仕事をしていた期間のことを後ろめたく、また触れられたくない過去として扱ってるらしい。(人づてに聞いた話だが)
「少しばかりズルイ手口」と言っても10年も経てば時効だし、その10年のうちの8〜9年は彼の実力の成し得た結果そのものであるから、私自身は「やぁ〜」と声をかけることができる気分ではあるものの、それとて不本意な来訪は彼にとって好ましくないものだろうから、今なお疎遠な状態が続いている。
疎遠は構わないのだが、そそり立つタワーの曲面ガラスを見あげて考え込んでしまった。
ここに入居して会社経営したいか?と問われれば、確かに「別に・・・」だ。
彼の社長業を代わりにやってみたいか?と問われれば、これまた「別に・・・」だ。
単純な「羨望」とも違う、何かが心の中でうごめいている。
自分は10年間、何をやってきたんだろう。
やってることは10年前と何も変わっていない。
これから10年も、似たようなことを続けていくんだろうか。
今が「食うに困らない」のは確かだし、今後も恐らく「食うに困らない」生活が待ってる。
それ未満でもないし、それ以上でもない。
10年前、彼と一緒に仕事をしていた当時は、私自身もっと情熱に満ちてた気がする。
名古屋最大のオフィスビルで、今もなお情熱の石炭を燃やし続けているであろう彼への嫉妬だろうか、何かがうごめいている。