セリア USB充電器 で鉛蓄電池充電器の製作

 消費税が上がってしまうということで、うちも無駄に色々と買い物に励んだせいで、今月はクレカの利用額が30万を突破。
 必然的に部屋が狭くなるので部品庫(縁側)を片付けしましたら、なんか出てきました。


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 去年の夏〜秋にかけて、買い込んだバッテリーが・・・
 ここにあったのか・・って感じでまさに オー迷子ー って ATOK の変換どおりの心境。


 買って半年も経つと自然放電も進んでいますから急ぎ充電しないといけないのはもちろん、もうしばらく使わないで保管する可能性が高いので、補充電管理をしないとバッテリーを駄目にしてしまいます。
 さて、どうするか・・・?


 と、フックにかけて棚に吊ってあるレジ袋を探れば、セリア DCDC で作る、なんちゃって PoE 受電アダプタ の時に大人買いしたセリア DCDC が大量にあるじゃありませんか。
 かなり消費したつもりなのに、まだ6個くらい入ってます。


 ちょうどバッテリーのストックに一致・・・これは、つまり、使ってくれってことですよね?


仕様

充電電圧 13.8V くらい
充電電流 最大で 1.0〜1.2A くらい

※あまり厳密な挙動ではないですが、CVCC(定電圧定電流)に近い動作
※充電終了後は自動的にフローティング充電(秋月の鉛蓄電池充電器パーツキット みたいな感じ)


 10AH の充電に半日、20AH に丸一日くらい必要です。
 もっと巨大な数十AHなバッテリーを相手にしても特に問題はないですが、容量によっては満充電まで途方もない時間がかかり、実用面で使い物にならないので、ちゃんとした充電器で満充電させたうえで、保管中の劣化を防ぐ目的で補充電に用途を絞って使ったほうがいいと思います。


材料 (容量 5AH 以上のバッテリー向け仕様)

セリア USBチャージャー 800mA品 105円 性能的には CW-167DC のほうが上 だが
加工性でセリアをチョイス
2.1mm標準DCジャック(基板取付用)
MJ-179P
40円
ショットキーダイオード 1S4 30円 入力30Vまでなら 1S3 でも可
汎用ダイオード 1N4148 50本で100円 何でも可
抵抗 8.2kΩ 100本で100円 金属被膜のほうが誤差が少ないが、
MC34063自体がアバウトなので・・・
電圧低めにするなら12kΩ(使い方は最後のほうに記述)
抵抗 0.2Ω分 (1/2W) 100本で100円 1Ω抵抗を5本並列にするのが最安と思われ
抵抗 1kΩ 100本で100円 LEDの電流制限用
LEDを点さないなら不要
ミノムシクリップ 105円 ダイソーに12個くらい入ったやつあり
電源 16〜40V、1A〜 中古 時価(300円前後) ノートパソコン用のアダプタ等、廃品をゲットするべし


 電源を除けば部品代200円弱というところです。


 充電電流制限は MC34063 に標準で備わってる入力側のシャント抵抗(リミッター)を活用することにします。
 ちゃんと出力側を検知するのと比べて精度が下がりますが、まぁ相手が鉛蓄電池ですから・・・


 セリア USB充電器 には元々 0.15Ω が使用されていますが、これは MC34063 の仕様違反。
 かつ、これで過去に破壊に至らしめた経験があるので、0.15Ω のまま使用するのは禁止です。
 面倒でも 0.2Ω以上 に交換してください。


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 出力電圧(充電電圧)は FB ピンに戻す分圧比を弄って調整しますが、データシートによれば

 出力電圧 = (3.9kΩ + R3追加 + 1.3kΩ) ÷ 1.3kΩ × 1.25

の計算式になることになっているので、13.8V くらいを目指すとして計算して R3追加≒9.1kΩ と求めて実際にやってみると、無負荷時に 14.8V くらい出ちゃいます。
 なぜかよく分かりませんけど、8.2kΩ にしたら、ちょうど 13.7〜13.9V くらいになりましたので、この定数にしてあります。
 追い込みたい方は可変抵抗にでもしてやって下さい。


 サイクルユースの人は、9.1kΩ・14.8V で急速充電してもいいですが、充電完了したら忘れず取り外す必要があります。
 14.8V かけっぱなしで何日も放置しておくと、たぶんバッテリーが劣化します。


 今回はセリアDCDCから見た負荷側がバッテリーということで逆流防止が必要です。
 保護を省略すると MC34063 が破壊します、っていうか破壊させました・・・


 ぱっと思いつくのが出力側にショットキーダイオードを入れる方法だと思いますが、少しでも効率を稼ぐため(順方向損失を少なくするため)上記のような回路にしてみました。
 ちょっとした自己主張です。。。



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1.
 シャント抵抗 0.2Ω を予め作っておきます。
 おおよその充電電流が最大で 1.2A くらいになります。
 ここの抵抗値を大きくすると充電電流が少なくなりますので、5AH未満のバッテリーを対象にするときは大きな抵抗に変更して下さい。


 理論値で計算(Imax=0.3V÷RΩ)して、これがバッテリーの 0.3C を超えないようにします。
 実際には計算値よりも安全側に振れますので安心です。


※1.5AH のバッテリーなら 0.66Ω (2Ω×3並列)



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2.
 これまでの工作同様に、バネなどの金属類を 吸い取り線 などを使って綺麗に取り除きます。
 今回はマイナス側についてる数センチの線も撤去します。


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3.
 バネの嵌ってた長方形の穴にDCジャックのプラスがジャストミートするので取り付けます。
 マイナス側は元々付いていた数センチの線の代わりにショットキーダイオード 1S4 で渡します。


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4.
 もともと付いている 0.15Ω のシャント抵抗を取り外し、1. で作ったものに置き換えます。


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5.
 MC34063 保護用のダイオードを半田面に取り付けます。
 基本的に大電流は流れないので 1N4148 みたいな小信号用でいいです。
 1S4 や 1S3 を10本買いして 1N4148 みたいなのを持ってない人は、1S4 や 1S3 でも構いません。


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6.
 R3 の片足だけ取り外します。
 LED電流制限抵抗 R4 も標準のままだと加熱しすぎるので、取り外します。


 5V が出てると勘違いしてスマホの充電に使ったりすると、それはそれは恐ろしいことが起きるので、USBコネクタ も撤去しておいたほうがベター。


 R3 の片方に 8.2kΩを、LED電流制限抵抗 R4 のところに 1kΩ をそれぞれ取り付けて、あとはバッテリーに向かうコードを出力部に半田付けして完成〜♪


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 念のため無負荷時の電圧が 13.7〜13.9V くらいの範囲内であることを確認しておくとともに、電流計を持ってる人は、空っぽのバッテリーへの充電時に電流が流れすぎていないか、も一緒に測定しておきます。


 入力側で電流制限やってるせいで、充電電流制限はシビアには追い込めません。
 どうせ鉛蓄電池が相手ですから、安全マージンを見込みつつ、あまり神経質にならずアバウトに構えましょう。
(この回路をもとにして、リチウムイオン充電器やリポ充電器に改造するのは禁止です。あれはアバウトに遊ぶと爆発します)


 空に近いバッテリーへの充電中は電圧が下がりますが、これは CVCC ぽい挙動の結果ですので正常です。
 満充電に近づくにつれて無負荷時電圧に近づいていきます。


 最初の回路図で、入力で逆流防止するのはいいとして、なんでマイナス側に!?って思われた方、組み立て写真図解を見て頂いてお分かりだと思いますが、DCジャックを基板に差し込んで使う場合、プラス側にショットキーダイオードを挿入することが物理的にできないので、仕方なくマイナス側に入れた次第。。
 入力側の GND と比べて Vf の分だけ浮いてしまうのが難点です。
(入力側の GND と出力側の GND とを別物として扱えば問題ないのだが)


 「じゃあ、DCジャックを基板に差し込まずに使えば、簡単にプラス側にショットキーダイオードを挿入できるじゃん」って思いつく方は、もう既に着手なさっていることだと思いますので、それはそれでやって頂くとして、どうしても DCジャックを基板に差し込みたい私みたいな方むけ追加情報を〜


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 ずばりパターンカット!
 そこまでして「DCジャックを差す」に拘るか!?ってところですが・・・


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 基板自体は切らずパターンだけ上手に切ります。 
 プラカッターがあると非常に便利ですが、普通のカッターでも何とかなります。


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 確実に導通がなくなったことをテスターで確認し、ショットキーダイオードを渡します。
 片方のリードはDCジャックの穴へ、もう片方はシャント抵抗の足の付近を狙うといいかなと思います。


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 こんな感じにすると、GND を浮かすことなく、逆流保護できます。



充電電圧を少し下げたい人むけの追加情報



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 既存の R3 3.9kΩ に 8.2kΩ を直列追加する方法で3個ほど作りまして実測したら、13.8〜13.9V くらい。
 概ね問題ない範囲内ではあるものの、きもーち高めでして、数ヶ月といった長期にわたり補充電させたまま放置するならば、もう少し低いほうがいいかもしれません。


 右写真のような感じに、R3 3.9kΩ を撤去したうえで 12kΩ に換装したところ、出力は 13.6V くらいになりました。
 数ヶ月にわたってフロート充電させたまま放置予定の人は 12kΩ・13.6V のほうがバッテリーに優しいかと思われ


 充電器それぞれに ACアダプタ を繋ぐとカオスになるので、下左のような4つ又を作って、買い置きしたバッテリーに同時充電


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 数ヶ月くらい、このまま充電放置して問題がないか様子見してみますね。


(追記)
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 基板むき出しだとショートしかねないので、本番運用中は元のケースに仕舞っておきましょう。


 セリア DCDC で作る、なんちゃって PoE 受電アダプタ でも書きましたが、ケース内側に付いてるヒダヒダをラジペンで掴んで もぎ取ってやると、(形状にも依りますが)DCコネクタがいい感じに収まります。 


追記(2014/08/05)
 これを書いて4ヶ月ほど経ちましたが、ずっと補充電放置させてましたもの、何の問題もなく調子いいままです。


 補充電用途であれば当回路で全く問題ないと思いますが、ちゃんとした充電には不向きなのは確か。。。


 こんな入力側で電流制限した「なんちゃって」ではなく、ちゃんと出力側を電流監視する充電器を別に作りました。
 1000円+で作る 100W 級 MPPT 充電器


 最大充電電流は使用する DCDC に依存し、作例では 7.5〜8A のものを使ってます。
 簡易型の MPPT回路 も搭載してますが、太陽光発電やらない人にとっては MPPT は無用なので、その部分を外せば予算1000円以下になると思います。


追記(2015/02/01)
 本記事は MC34063 を降圧させて使う充電器ですが、昇圧させて使うほうが効率が良いぽいです。
(さすがに大電流は無理なので、充電に時間がかかっても良い用途、もしくは補充電に限りますが)


 Raspberry PI や ECS LIVA など、5V で動く小型パソコン向け高効率な UPS を作る記事 の中で、MC34063 を使った昇圧充電回路例も披露してますので、あわせてご覧下さいませ。