過放電防止つき車載電源の製作

追記(2012/10/23)
 下記回路の製作費は100円前後ですが、更に+100円の追加投資で温度補償してくれる過放電防止回路を作りました。
 興味のある方は 簡単だけど、まじめに過放電防止 をご覧下さい。



 若松Mark2を車載し、秋月の 12V12AH な鉛蓄電池 をサブバッテリーに使って駐車中にも給電を行い、いわば移動式モニタリングポストとして色々と実験をしていますが、バッテリーを買って1ヶ月で3度も過放電させてしまいました。
 3回とも開放電圧が 6V 台になるまで搾り取ってしまいましたので、かなりのダメージをバッテリーに与えたであろうは想像に難くないですが、新しいバッテリーを新調する前に、不注意で過放電に陥らせてしまうことがないよう保護回路を作りました。


http://dl.ftrans.etr.jp/?cc0267e4f2114e4bbb0ba66a78275c3b22a9b872.png


 右側は 秋月の5A DC/DCセット(500円) でして、その左側(前段)が拙作の過放電防止回路となります。
 ちなみに、秋月のセットには抵抗やコンデンサは入ってませんので、内容品を確認のうえ足りない部品も手配が必要です。
(5Aもの出力が不要なら100均に売ってるシガーソケット式DCDCを流用するのが安上がりです)


 基本的な概念を NiMH放電器の製作 で前勉強しつつ、回路の開閉は MOSFET にやらせて、各定数は鉛蓄電池むけに Excel で試算しつつ最終的には実機あわせ、って感じです。
 オペアンプを何段も重ねたような豪勢な回路(温度補償とかしてる)も見受けますが、どーせ売り物じゃないし、細かいところは目をつむって、最小部品点数で出来るだけシンプルに!


 2SA1015 や 2K2961 とかは手持ち定番在庫品なだけで、似たような仕様のもの(PNP型トランジスタエンハンスメントなNchパワーMOSFET)ならば、たいていは大丈夫です。
 2SK2961 は RDS が 0.2Ω と大きめなので、もう少し RDS の小さい品を選定されると更に効率が上がっていいですね。


 カットオフの電圧は途中の可変抵抗を弄って調整します。
 近くにノイズ源があったりで誤作動する方は 10k〜10kVR〜220k の分圧抵抗を、比率そのままで、もっと小さい値にしてやってください。捨てる電気が少し増えますがノイズ耐性は上がります。
 電気工作er としては、死ぬまで抵抗には困らない 抵抗7800本フルセット とか一家に1セット必需品ですよー



 いちお自己電源をも遮断してますので、過放電後に更に回路によって過放電が進行することはないはず・・・
 よって起動にはスイッチが必要になってます。
 左下のところ MOSFET のソースとドレインを一瞬短絡させることで、 MOSFET のゲートを一瞬+に繋ぐことで、回路に電気が流れ始める挙動になっています。
(スイッチはタクトスイッチのような押してる間だけ導通するものを選んで下さい)
※タクトスイッチへの負荷を考えてゲート制御に変更し回路図も差し替えました


 一定電圧を回復したら自動的に復帰する回路を組み込むか悩んだのですが、走行中は車の ACC から電気を引いてサブバッテリーへの充電もしてはいるものの、過放電防止が働くほどに放電したときには「走行中のみ充電」では追いつかず、部屋にバッテリーを持ち込んで商用電力から充電しないといけないほどですから、個人的には重要度が低いと割り切って、とりあえずシンプルに今回のようなスイッチ式にしてみました。
 

 MOSFET を分圧抵抗の右側(負荷側)に置けば自動復帰するんじゃないの?と思われる方もおられるでしょうけど、やってみると分かりますが、右側に設置すると過放電の判定電圧付近でカチカチと OFF/ON を繰り返すようになります。
 過放電検知で負荷を切り離し→負荷がなくなったことでバッテリー電圧が上昇→電圧があがって負荷を接続→バッテリーの電圧低下・・・のループが暫く続きます。


http://dl.ftrans.etr.jp/?09a620e4649e45019ee3796bd794cee9ce51afd9.jpg http://dl.ftrans.etr.jp/?8511472ec3bc4413b2a236a434e965b29eb3a106.jpg


 ブレッドボード上で仮組みして各定数の追い込みをかけて、最後にユニバ基板に載せて完成となります。


 PNPとNchで組むと、こんな風にバッテリーと比較して出力側のGND側が僅かに浮いたような感じになってしまいます。
 普通に使う分には問題ありませんけど、バッテリーのマイナスと出力側のマイナスとは繋げてはいけません。
(起動スイッチ常時ONと等価状態になり過放電防止が機能しなくなる)


 私の手持ち在庫に Pch がなかったので、NchなMOSFET 使いましたが、これから部品を調達して製作される方は、NPNとPchとを使って、上下正反対な回路(MOSFETをプラス側に入れる)を作ったほうがいいかもしれません。
(+側が僅かに電圧降下する風になり、GND側はバッテリーと共通にできる)


 あと・・・いつものごとく保護回路がありません。
 5V出力側の短絡とかは多分 NJM2367 がうまいことやってくれると思いますが、私が作った左側の回路の部分は恐らく短絡すると MOSFET が焼損します。
 部品が焦げて済めばいいですが、電気の元は大容量のバッテリーなので、溶断ヒューズなりポリスイッチなり挿入しておいたほうがいいと思います。


追記(2011/11/05)
http://dl.ftrans.etr.jp/?af757e05d14a413e9c8f86373c9616e12ce512ca.png
 2SJ380 を買ってきましたので、NPN と Pch とを使って上下正反対にした MOSFET をプラス側に入れるものを作りました。(回路は過放電防止の部分、クリックすると大きく見えます)
 バッテリー側と負荷側と GND を共通にできるので、特に車載とかで「車体アース」で使うときは、この回路のほうがいいと思います。


 すでにユニバ基盤に半田づけした部品を剥がして載せ替えるのも面倒なので、右の回路はブレッドボード上で確認してオシマイにしてますが、最初から 2SJ 使っておけばよかったなぁー


注意
 当回路は超シンプルな反面、温度補償を行っていないため常識的な気温の範囲内でトランジスタのON/OFFが0.1Vくらい変動します。
 0.6〜0.7Vに対して0.1Vですので変動幅は約15%です。
(12V時に換算すると1.8Vくらい変動しえる)
 

 過放電検知の閾値を設定したときの気温に比べて、気温が高いと高めに(早くに過放電を検知)、気温が低いと低めに(過放電の検知が遅れる)になります。
 鉛蓄電池は低温になると放電しづらくなる特性があるため、この「気温が下がると過放電検知の閾値も下がる」は逆に好都合な面もあるのですが、リチウムイオン電池やリチウムポリマー電池のように、過放電保護の検知をシビアに行わないといけないものには不向きです。
 きちんと温度補償された回路を使うべきですが、お手軽で済ませる場合、できるだけ寒い状態で閾値設定を行うか、あらかじめ十分なマージンを見込んで下さい。
※そもそもリチウムイオンやリチウムポリマーの場合はトランジスタのベースに投入する電圧の分圧比も変更する必要あります