12V な小型パソコン向け高効率 UPS の製作
以前に 5V な小型パソコン向け高効率 UPS の製作 という記事を書きましたが、早くも1年が経ってしまいました。
加齢と共に時間の流れが早くなるというのは事実のようで。
当時はラズパイ向けに製作した UPS ではありますが、最近のところでは、工作机に常置した 24h 稼働な宅内ファイルサーバー・LIVA の安定給電を担う役割に昇進しております。
ファイルサーバーというからにはストレージも接続されているわけで、SATA ポートのない LIVA 故に USB-HDD 2台が繋がっているのですが、こいつらは中身が 3.5インチSATA なため、電源(ACアダプタ)が 12V なのですよ。
この USB-HDD は LIVA からはリムーバルメディアとして見えるため、多少なりとも停電に強い(と思われる)ものの、UPS で保護されるのは LIVA のみで、HDD は停電の影響をモロに受けるというアンバランスな状態になってました。
しばらくアクセスしないでいれば自動で節電モードに入って USB-HDD の電源が切れますが、アクセス中はそれなりに電気を食うので、5V UPS から昇圧して賄うこともできません。
というわけで、昔取った杵柄じゃないですが、1年前に製作した 5V-UPS の 12V版 を製作したいと思います。
新しい LIVA-X などは 5V でなく 12V で動くようになったらしいし、USB3.0 の仕様で許されているとは言え microUSB の極細ピンに 3A もの大電流を流すことが、いかにキチガイじみてるかメーカーもようやく気がついたのでしょうか。
基本的な思想は 5V版 と一緒ですので、細かい説明は省きます。(5V版を読んで下さい)
違う点を中心に簡単に説明します。
昇圧式の充電回路
入力 12V に対して鉛蓄電池1つだと考えないといけないことが増えるので2直列・24V にしてしまいます。
おなじみ MC34063(NJM2360) を使った非同期チョッパ昇圧での充電になるで逆流防止ダイオードを省けます。
5V版 と比べて若干定数が変わってますが、ほぼ全く一緒です。
充電電圧は 13.4V×2=26.8V くらいがいいでしょう。
停電判定・復電判定および切替制御
5V版 では バッテリー電圧>5V である点を活用して、Nch MOSFET のゲート制御をバッテリー電圧まで吊り上げてハイサイドで利用してました。
今回も同じようにできると思われるかもしれません。
バッテリー電圧(約27V)>12V なので Nch MOSFET のゲートにバッテリー電圧をかけてハイサイド制御できるように見えますが、MOSFET のソースが GND(0V) になる事態も想定すると、 Vgs が最大で 27V くらいなってしまいます。
Vgs(max) が 30V くらいの高耐圧 MOSFET も探せばあるとは思いますが、一般的な低電圧向け MOSFET は大体 20V ですので、5V版 と同じ方法でやると MOSFET が壊れる可能性があります。
Nch MOSFET のソースは 0〜12V の幅で変動しうると仮定し、ソースに 12V かかってる時でも Vgs>4V でしっかりゲート制御できるよう、バッテリーから 18V 前後の電圧を生成して、こいつをゲート制御に使うようにしました。
んで、18.3V 生成してる部分を見て、18V と言っておきながら S-812C33AY-B-G などという 3.3V三端子を使ってるんじゃ!?って気づかれた方、はい、その通りでして。
18V なんて半端な三端子は 入手困難(マルツにありました) なので、LM317 みたいな可変三端子で作る方法が普通だと思いますけど、あいにく手持ちがなかったため、3.3V三端子と15Vツェナーの組み合わせで 18.3V を作ってやりました。
いちお、こんな変態な方法もあるんだよ、くらいで読み流して下さい。
(18Vな三端子もしくは可変三端子で作るのが普通だと思います)
切替わる閾値は右側の M1584 の 出力電圧−0.7V くらいになりますが、5V のときほどシビアじゃないので気が楽です。
M1584 の出力を 12.0V に調整しておけば、2SA1015 の VBE 分だけ下の 11.3V 付近で切り替わるようになります。
あと回路図では分かりやすさの観点で普通の Nch MOSFET と Pch MOSFET で切替えする風で書きましたが、私のところでは TPC8408 という1チップに Nch と Pch が載ってるやつを使ってみてます。
廃熱が大丈夫か気になるところですが、3Aくらいは全く平気な手応え。
ただし、変換基板 を使う場合は、パターンが細すぎて電流的にヤバいので、適当なリード線で補強してやって下さい。
最終段
入力:12V、出力:12V な単純な UPS です。
USB-HDD へは 12V そのまま給電し、LIVA や IGZO へは 12V→5V に 降圧DCDC した上で給電します。
LIVA への 5V は 3A くらいの供給余力があったほうが安心なので、バッテリーからの降圧にも使った最大 3A な M1584 を投入しますが、IGZO は 1A で大丈夫なので、100均DCDC で代用します。(お薦め ミーツ/ダイソー)
もちろん、4〜5A くらいの余力ある DCDC を使って1つで両方に給電するようにしても大丈夫です。
LIVA は電源条件がシビアなので、イマイチな電源ケーブルを使うと使用中に突然再起動かかったりします。
本来は電源ケーブルを何とかするのが筋ですが、USB の細い線に補償なしで 3A 流そうとするほうにこそ無理があるので、M1584 の出力を 5.0V じゃなく 5.2〜5.4V くらいに吊り上げてやったほうがむしろ安定すると思います。
5V系は非停電時でも 100V→12V→5V と2回DCDCされることになり無駄が増えます(効率は下がります)が、そこまで気になる方は、12V-UPS と 5V-UPS とを併用して下さいませ。
※左の小さいほうが 5V-UPS、右の大きい方が 12V-UPS
(追記)
上記回路例は、LIVA+外付け3.5インチSATA×2台 くらいまでが守備範囲で、もっと電気が必要なときは
- バッテリー(約27V)→12V の降圧DCDCをパワーアップ
- 切り替えに使う MOSFET を許容電流の大きなものへ
の変更が必要です。
(追記)2018/12/27
19V 版の記事 を書きました。
かなり手抜きしました(汗