過放電を防止しつつインバーター給電

 2年ほど前に書いた「まじめに過放電防止」に コメント を頂きました。

電子工作素人です。教えてください。


車のバッテリー85D26Lの余りがあり、インバーター200wを使用しています。
使いすぎが怖く、こちらの過放電防止回路を作って使用できるのでしょうか?


バッテリーとインバーターの間に設置でよいでしょうか?

 当時の回路図では、過放電を検知したとき MOSFET を使って後段の負荷への給電を直接スイッチしてました。
 コメント主さんの方の使い方だと、200Wインバーターということで、ざっくり 12V-20A の電力をスイッチする必要があり、秋月の中で 2SJ334 あたり選んだとしても、11W ほどと見られる発熱を対処しないといけません。


 それならば、と、リレーでスイッチするプランを思いつくかも知れません。
 全部のインバーターがそうであるかどうかは分かりませんが、少なくとも私の使ってる COTEK のインバーターには、下記のような注意書きがありました。


http://dl.ftrans.etr.jp/?028c2825270c42c49870b59351ac3f8e7cbb8164.png


 リレーは不可だけど MOSFET ならば良いのかもしれませんが、メーカーとしてはヒューズのような「ゆっくり溶断するもの」しか許容しない感じです。


 ということで、安全にインバーターを制御する回路例を考えてみました。
 コメント主さんが M51957B を使う予定とのことですので、M51958B を使った例は割愛してあります。


自動遮断・手動起動 (過放電検知後に自己消費で放電進行することが、ほぼゼロ)元記事
http://dl.ftrans.etr.jp/?55864f22bda1462b900b2cad11ce190ea2cbb84f.png


自動遮断・自動起動 (過放電検知後に自己消費で放電進行します) 元記事
http://dl.ftrans.etr.jp/?8a4ccc969ca94fc6bd1e4fc1d011d5727a7f38e7.png


自動遮断・自動起動を M51957B 1つで実現 (過放電検知後に自己消費で放電進行)元記事
http://dl.ftrans.etr.jp/?cbbbba984eac4021829acfac7188558a03bc2b8d.png
※ すべての回路図はクリックすると等倍で見れます。
※ 前2つは以前の回路図を再掲してまして、リレーの制御のために IRLML6402 は完全にオーバースペックです
※ リレーの接点部分は無通電時の状態を示してます。本回路図のように 1A リレーでなく 1C リレーのとき注意
※ 最後の回路図 R1〜R4 の選定は こちらの Excelシート を参照して決定してください

2015/01/24
 R1〜R4 の選定エクセルシートに一部間違いがあり、ファイルを差し替えさせていただきました。
 VGSminとVGSmaxの計算が間違えてました、申し訳ありません。

 インバーターのスイッチ(2極)にコードを半田付けして、外部に取り出します。
 もとある回線は残したままで、スイッチ自体を摘出する必要はありません。


 外部に取り出したコードをリレーで 繋ぐ/外す してやることで制御しますが、インバーターの標準スイッチが ON だと、そっちが優先してしまうので、リモート制御するときは OFF にしておきましょう。



 上の例では、リレーに Y14H-1C-12DS (1A) を用いました。
 私の手持ち COTEK の 700VA / 1500VA のインバーターではスイッチ部に大電流が流れる構造になっておらず、1A のリレーでまったく問題ありませんでしたが、念のため調査したほうがいいです。
(テスターで電流測定するとか、スイッチの許容電流やスイッチ裏の配線の太さから推測するとか)


 インバーターのスイッチを外部制御する方法なので、よほど短時間に連続して ON/OFF を切替えしない限り(起動電圧と遮断電圧を近づけすぎない限り)、壊れる心配はしなくても大丈夫です。


(追記)
 当記事の元になった記事のコメント欄のやりとり をご覧頂くと分かりますが、負荷(今回の例ではインバーター)の消費電流が大きいと、起動する瞬間の大電流に伴って生じる電圧降下の影響を過放電防止回路も受けてしまい、意図しない挙動を引き起こす可能性があります。

  • M51957B 自体が電圧降下して挙動不審になる
  • 一瞬の電圧降下なのに過放電発生と誤検知してしまう

の二通りが考えられるので、簡単な対策例を挙げておきます。


http://dl.ftrans.etr.jp/?f232227244f14919911a3734b75048fd962e5c32.png


 上に掲げた3つそれぞれの対策例を書くのも面倒なので、最後の「M51957B 1つで云々」という回路に対してのみ書きますが、その他の2つのほか、当記事の元ネタのほうに書いてある M51958B を使った例 でも同様なので、それぞれ当てはめてください。


 赤○と赤□の中がそれで、赤○で電源をバッファし、赤□で検知を緩慢にしています。
 各定数は特段のこだわりがあるわけでもなくテキトー値です。


 100Ω のところは M51957B の電源のためにあしらえた 0.1μF コンデンサ電荷を負荷に吸い上げられないようにするためのもので 10Ω〜1kΩ くらいの範囲なら概ね大丈夫じゃないかなぁと思います。
 抵抗の代わりに下向きダイオードを使ってもらっても構いません。


 赤□印の 0.1μF は、細かい電圧変化を緩慢にするべくローパスフィルター的に振る舞います。
 コンデンサの容量と緩慢具合の関係は R1〜R4 に依存するので一概に決められませんが、まぁ困ったら 0.1μF って言うくらい(笑)なので 0.1μF にしてあります。
 大きいと、より緩慢に、小さいと俊敏に、それぞれ変化しますので、適当にチューニングしてください。 


追記(2015/01/21)
 コメント頂きました電子工作初心者さんの定数にて、ヒステリシスの挙動を動画撮影してみました。
 回路は M51957B 1つで・・・というやつで、定数は R1:2400Ω、R2:240Ω、R3:12000Ω、R4:5100Ω です。

 タッパに入った装置が可変電源で、左下の黒いテスターが IN を、右下の緑のテスターが OUT を、それぞれ電圧計測してます。