独立型太陽光発電 に UPS を華麗に組み合わせる(ノイズ対策) 前編

 独立型太陽光発電無停電電源装置(UPS)を組み合わせて、(中古UPSを入手する前提で)非常にリーズナブルなシステムを構築できました。(記事 → 前編後編応用編
 まったく無問題かのように思われたのですが・・・


 うちでは空き地に据え置いた太陽光パネル(6枚990W分)を日よけ/雨よけに利用しつつ、その真下の空間に超高感度なガイガー管を定置して空間放射線量を連続測定しています。
 降雨に伴うラドン増も捉えられるほどの高感度管なのですが、UPSインバーター代わりにしてから異変が起きていました。
 

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 きちんと校正していないので、カウント値を μSV/h で書き表すことは出来ないのですが、あの管で 3000cpm ったら 0.5μSV/h を超えている可能性が高く、0.5μSV/h と言えば一般人が近寄ることを規制されているチェルノブイリの管理棟の前の空間線量・・・
 時間を見て頂くと想像つくかと思いますが、UPSインバーターとして稼働するほどの日照に恵まれた時間帯に物凄い測定値を叩き出していますから、明らかにノイズだろうと判定できます。
 しかも 10/30 のように UPS の作動を強制停止させた日にはノイズが測定されないので、そのノイズ源は UPS と確定・・


 このノイジーな測定値ですが、3600cpm を超えることはないぽい挙動です。
 60Hz をカウントすると 3600cpm になるので、単純に 60Hz をカウントしてるのでしょう。


 とりあえずノイズ対策の基本はアースから・・・ということで、テキトーにアース棒を打ち込んで UPS を接地してみます。
※以下、すべてバッテリー運転中の話です


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 (写真は割愛しますが)・・・まったく効果なし!


 ちゃんとアース効いてるのか?気にかかるところですが

電圧線−中性線 間の交流電圧値 電圧線−アース線 間の交流電圧値
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 中性線よりもアースのほうが電位が低いので、まったくアースが効いてないということは無さそうな雰囲気。。。
 ノイズが輻射してる原因を追及するため、秋月オシロ を出動させます。


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スロープ側で電圧を 1/10 にしてます。(縦目盛りは DC5V と書かれてますが実際には DC50V です)


 巨大な MOSFET の付近を探るとバッテリー48V の電圧を 45kHz 程度の周波数で DCDC やって DC160V くらいにいったん昇圧させてから、次段で AC100V を生成してることが分かります。
 そして単相2線な AC100V を生成しているのですが、バッテリーのマイナスを基準にして、UPS の出力コンセントをオシロ測定してみて驚愕の事実が・・・

中性線とされる側の電圧変化(基板上で白線) 電圧線とされる側の電圧変化(基板上で黒線)
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※スロープ側で電圧を 1/10 にしてます。(縦目盛りは DC5V と書かれてますが実際には DC50V です)
※2つの信号波形は横軸の同期が取れてませんので、別々の時間軸を示しています。


 なんと、バッテリーのマイナス を基準にオシロ測定できてしまった・・・・


 つまりこれ、停電動作中はバッテリーと AC100V側 とが絶縁されていないんですね。。


 確かに UPS はバッテリーを内蔵させて、かつ他の機器とバッテリーを共用する前提ではないので、無駄にトランスかまして絶縁させる必要ないという割り切りは間違いではないですし、UPS に繋げる負荷は、(全うな品であれば)必ず絶縁されたものであるべきなので、この構成で実害はないですけれど、バッテリーからダイレクトに AC100V に昇圧してると思うと、何となくドキドキしてしまいます。。。

厳重注意
 完全には絶縁されていないぽい雰囲気(たぶん タップ切換方式のAVR)なので、同一バッテリーを複数 UPS で共用する使い方は禁止です。
 どうしても複数 UPS したいときは、UPS のAC入力側に 100:100 のトランスを挟んで明示的に絶縁させて下さい。
 複数 UPS じゃない人も、できれば 100:100 のトランスを挟んだほうが安心です。


 あと、波形をご覧いただくと分かるとおり、普通に正負に振れる正弦波を作ってるんじゃなくて、あんな風な波形の電圧を出しておいて、お互いを差し引くと正弦波になる、という作りなんですね。(これも別の意味で驚き)
→写真を取り忘れましたが、中性線−電圧線 の間でオシロ測定すると、きれいな正弦波に見えました。

 

 さて、話を最初のノイズ話に戻しますと、右側の波形の急峻なトンガリ部分が非常に気にかかりますよね。
 左写真の方形波の立ち上がり/立ち下がりに同期して、右側で物凄いエッジを立てています。
 2つの差し引きで正弦波になったとき、ゼロクロスする地点でしょう。



 UPSとしてはバッテリー内蔵がデフォなんだから、外部への輻射の心配はしなくて良いのですが、私みたいな使い方だと、こんなトンガリ作られたんじゃノイズが漏れないわけないだろ・・・
 

 どのくらいノイジーを輻射しているのかを測定すべく、アースを基準にしてバッテリーのプラスをオシロ測定してみます。

無負荷 中負荷(600W)
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 アース〜バッテリーマイナスの間で測定したときも、ほぼ上下対称で同様な波形です。
 (ちゃんとアースが効いてるはずという前提ですが)対地で、こんだけの電位を持つ電荷がバッテリー側に漏れ出ています。


 UPS からバッテリー側に漏れ出したノイズが、ケーブルを伝って MPPT充電器 の出力に達し、更に入力側の太陽光パネルへ・・・という風に「ノイズが遡上」したうえで、パネルがアンテナの役割を果たしてノイズを輻射し、その真下に設置されたガイガー管が誤カウントするという流れでしょう。


 後編に続きます。