太陽光発電 に UPS を華麗に組み合わせる (前編)

 5年前に架設した独立型の太陽光発電システムですが、今年の GW 明けから色々と不備が出てきて

という感じに諸問題を克服して参りました。


 んで、現時点における最終的なシステム構成は


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 簡単に左上から補足しますと、隣の空き地に展開してあるパネル(3直2並で990W分)から屋内設置の MPPT 充電コントローラへ入り、ヒューズ内蔵の開閉器を経由して犬走りに置いてあるバッテリーを充電。
 インバーターがバッテリーの電気を使って AC100V を作り出し、自動電源切替機 を介して冷蔵庫や除湿器などへ給電。
(バッテリーは日照変化に伴う発電量の変化を吸収するためのキャパシタとして設置してあって、夜間に使う前提ではない)


 自作の自動電源切替機の内部リレーの切り替り速度は 25ms 程度と比較的遅いため、パソコンの瞬停防止のため、停電に弱いパソコンへは UPS(無停電電源装置) を経由しています。


 いかにも「ペイントで描きました」って感じで見にくいのは御容赦いただくとして、独立型で太陽光発電やってる人にとっては、極めてありふれた一般的な構成じゃないかなぁと思います。


 システム電圧、端から 12V は論外として、24V か 48V か、どっちで構築するか最初に迷ったんですけど、1000W 前後を扱う場合、24V だと電流値 50A なんですよね。
 圧着不良とか端子台へのネジ締めトルク不足とか、配線でヘマやったら家が燃えちゃいかねない電流なので、半分の 25A 程度で 1000W を扱える 48Vシステムにした次第。。


 正弦波を出すインバーターは 24V 仕様でも割高ですが、まだ安売りしてる店を探せば出てくるんですけど、48V 仕様は値引きして売ってるところが皆無なので、マジで高いっ!
 MPPT充電コントローラは TriStar など、3万円台で 48V 仕様のものが買える時世となりましたが、正弦波で大容量な安い 48V インバーターは本当に売ってません。
(予備品として出してきた 600VA は、たまたまヤフオクに出品されていた品で、以前に落札してた)




 そんななか、たまたま立ち寄った某ハード○フで見つけてしまった品がこちら
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オムロン ラインインタラクティブ方式
1500VA 正弦波出力 無停電電源装置 BN150S


通電確認のみ
要・バッテリー交換
付属品なし


  ¥5000−


 バッテリーがお亡くなりになっているとのことですが、1500VA な正弦波 UPS としては非常にお値打ちなプライスです。
 純正バッテリーは最初から眼中にないので、適合する互換バッテリーが安く手に入りそうなら買ってしまおうとネットで探してみたら、性能はともかく、汎用品の 12V/8Ah ×4 でもいけるとのこと。


 バッテリー4つだとぉ・・・?
 

 これ即ち 48V じゃん!


 確保ーっ


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 私にとって初オムロンですが、APC と違って YUASA の高出力対応の高級バッテリーなんか積んじゃってるんですか。
 さすが高級品!(単にバッテリーイメージが「高級」なだけで、UPS 本体が高級かどうかは知らない)


 さて、何を企んでるか予想つきましたか?


 UPS には、インバーターも自動切替機も、標準で備わっているではありませんか!
 なんという目から鱗


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 こんな風に、UPS の標準バッテリーを棄てて、代わりに太陽光発電で用いている(外に置いてある)4直バッテリーを接続。
 UPS のコンセントを引っこ抜いて(実際にはリレー制御しますけど)、停電状態を人為的に作り出せば、UPS は停電が起きたと錯覚し、バッテリーの電気を使って AC100V を作りだし負荷へ供給することでしょう。


 引っこ抜いた UPS のコンセントを元通りに戻せば、「停電が終了した」と判断し、バッテリーの電気を使うのを止めて、商用電力を負荷に渡してくれるはずです。


 自動的に インバーター/商用電力 の切り替えをする自動切替機なるものを作ったり改良したりしてきましたが、もうそんなものを組み合わせて使う必要ないではないですか!
 しかもバッテリーが繋がっているので、商用側が本当に停電したときは、ちゃんと無停電電源として機能してくれます。


 ちょっと心配すべきは、UPS の場合「復電」させると、自動的に負荷へ商用電力を供給するように切り替わるのはいいんですけど、このとき、一緒にバッテリーへの充電も始まるという点。
 「停電動作でバッテリーを使ったんだから充電しないといけない」という元々の UPS の挙動を考えたら当たり前なのですが、純正品の10倍を超える容量の巨大バッテリーを相手にして大丈夫か? 事前に調査してみる必要がありますよね。。




 てなわけで、独立型太陽光発電インバーターとして UPS が使えそうか?調べていくことにします。
 以下お決まり文となりますが、メーカー指定の使い方から大きく逸脱した完全に無保証の内容となりますので、くれぐれも自己責任でお願いします。
 また、私が 48V系 であることから 48V を前提で書きますけど、バッテリー2つを使う 24V系 の UPS でも基本的に同じかと思われますので 24V系 の人は読み替えて参考にしてください。(念のため本番運用前に事前調査することを推奨)


 まず説明書というか 仕様書なる詳細な資料が公開されている ので熟読しときます。

  • 停電時のブザー鳴動を無効 (意図的に停電にして運用するのでブザーは五月蠅いだけ)
  • バッテリ自動テストを禁止 (容量が全く違うので診断テストは意味なしと思われ)

 これらはディップスイッチで設定できます。
 あとパネルのボタン操作から

  • コールドスタートON (バッテリー給電のみで起動可能にする)

に設定しておくと便利でしょう。


 とりあえず純正バッテリーを使って「診断」します。


■無負荷時の待機電力(システム電力)
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 UPS本体とバッテリーの間にテスターを挿入し電流も併せて測定しています。
 緑のテスターでバッテリー電圧を、黒いテスターで電流を(UPS→バッテリーの方向を+として)測ってます。


 コールドスタートさせただけの「負荷なし」で 50V×0.34A で 17W の消費。
 これまで使ってた 1500VA インバーターは通常時で 0.4A の消費(実測でなく仕様値)だそうなので同等ですね。


■100W程度の負荷を接続してインバーター動作
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 本当は力率100%な白熱灯があるといいんでしょうけど見当たらないので、床下換気扇を負荷にしてみましたが、49.2V/2.6A というバッテリー消費になりました。
 97W÷(49.2V×2.6A)= 75.8% という変換効率です。
 うち無負荷時のシステム電力(17W)を差し引いてみると 87.4%


 (きっと)力率が悪い換気扇を相手にしてる割には健闘してるほうじゃないでしょうか。


 どうせバッテリーがアレなので、遠慮せずにどんどん消費させてみます。


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 バッテリー電圧が 43.7V まで低下した時点で消費は 3A に。
(負荷が要求する電力は一定なので、バッテリー電圧が低下すると必要電力を賄うため消費電流は増える)


 128W → 131W に悪化してるのは、低電圧で昇圧効率が僅かに低下してるせいでしょう。
 放電はこの位にして、次のテストに移ります。


■空っぽのバッテリーに対するフル充電
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 4直バッテリーを 44V 以下になるまで電気を使いました。
 負荷を取り外したら 45V まで回復しましたが、ほとんどスッカラカンの状態です。


 コンセントをつなぎ、(UPSにとっての)停電を終了にしてあげましょう。


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 復電したので充電も開始されます。
 電圧は 46V に上がり電流は 1.39A。
 これまでと違ってプラス値なので、UPS→バッテリー という充電方向の電流です。


 当たり前ではありますが、最大 1.4A くらいの設定値で、ちゃんと定電圧定電流(CVCC)充電する機能が備わっているぽい挙動なので、48V100AH などの巨大バッテリーを繋いだ時でも、1.4A の定電流が機能すると思われます。
 たった 1.4A の充電電流では満充電までに途方もなく時間がかかりますが、少なくとも不具合を起こす心配はなさそう。


 この時の UPS の消費電力は 93W。
 単純計算すると 46V×1.39A÷93W=68.8%、無負荷時にも掛かるシステム電力 17W を差し引くと 84.1%


 これまでは、バッテリーへの充電は全て太陽光発電で賄い、商用電力を使って補充電させるという発想がなかったのですが、今回はモノが UPS が故、商用電力に切り替わってる間は商用電力を使ってバッテリーへの充電が行われます。
 深放電に強いとされるディープサイクルバッテリーではありますが、使った電気は出来るだけ早くに充電したほうがバッテリーの寿命が伸びるので、バッテリーへの補充電が行われる今回の「標準的な仕様」は考えようによっては歓迎すべきところかも知れませんが、深夜電力でなくて普通の従量電灯契約の我が家にとっては、100W 弱の消費は微妙なところ。。


 昼間に 4kWh/日 くらい太陽光で発電できていて買電量を減らせているはずなのだから、100W×10時間 の 1kWh くらい補充電に使っても差し引きマイナスにはならない、と考えるべきか・・?
 もっと充電電流を絞れないか? 気が向いたら UPS を分解して探ってみたいと思いますが、とりあえずは我慢しておきます。


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 充電終了電圧は 54.0V (1個あたり換算 13.5V)
 この電圧で、たぶんフロート充電になってると思いますが、UPS の消費電力としては 16W。
 ちなみにワットチェッカーで表示された皮相電力は 25VA でしたので、意外と UPS って力率が悪いんですね。。



 以上、純正バッテリーを用いて簡単に「診断」してみましたが、巨大バッテリーを接続したときに問題となるようなことはなさそうな雰囲気。


 強いて不安箇所を挙げれば、インバーター動作(UPS にとっての停電)させる時間がメーカーの設計前提条件よりも遙かに長いであろう点。
 純正バッテリーだったら10分くらいしかバッテリーが持たないほどの消費電力・・・たとえば 1000W くらいの負荷をつないで、数時間にわたり連続インバーター運転させてもいいものか?という点です。


 お世辞にも、とても静かとは言い難い力強いファンが筐体内を強力に空冷しているので、それほど心配することじゃないとは思うんですけど、この辺は実際に運用してみないと分からないですねー


 後半 では実際に 48V100AH のバッテリーシステムに UPS を組み込み、本番運用してみた結果を書く予定でいます。
 数日お待ちを〜


(追記)2014/06/20
 外に置いてある 48V100AH のバッテリーに接続し、本番運用に即した 後編 を書きました。