手動式 MPPT 充放電コントローラの自動化 製作編

 構想してました「手動式MPPT 充放電コントローラの自動化」の回路図を実際にユニバーサル基板上に配置させて作ってみましたところ、最終的に 変換効率90%以上を実現!って書き始める前に、以前の回路図で特に特徴的な箇所だったと思う電圧可変化の仕組みだけ先に説明しておきます。
http://dl.ftrans.etr.jp/?10b023440c3a4f7b81ce390eed1ff1d61d4cc5d2.png


 NJM2367 という DCDCコントローラIC を使った例として回路図を書きました。
 アプリケーションマニュアル の中に電圧可変化の方法が書いてあり右に抜粋しておきますが、「出力電圧を5V以上の場合」のとおり R1 を接続すれば12〜15V も出せるようになります。


 Vout = (R2/R1 + 1) × 5


だそうで、R2 = 6.8kΩ のままとすれば、R1 を 4.9kΩ@12V 〜 3.4kΩ@15V の範囲で可変させることで所望の出力電圧を得ることが出来ます。


 マイコンで抵抗を可変させる時、電子ボリュームという部品を使う手もありますが制御コマンドも面倒だし、そこまで頑張るなら DCDCコントローラIC をマイコンから制御する方法を諦めて自力で PWM して MOSFET をカチカチやったほうが早いはず。
http://dl.ftrans.etr.jp/?6160867209ae4633a5c49ec26a0e16b043c426f4.png


 電源回路初心者の私が MOSFET カチカチにチャレンジするには現時点では少々敷居が高いので、DCDCコントローラIC の利用に拘った結果、右のとおり、高校生レベルの知識で何とかなる並列につないだ色んな抵抗を ON/OFF させて合成抵抗値を可変させることにしました。


 mbed ではピンを普段は浮かせておきつつプログラムで指定すると GND に落ちるという OpenDrain 出力というモードが備わっているので、これをスイッチとして利用します。


 5種類の抵抗の ON/OFF で作られる合成抵抗値の組み合わせは32通りですので、32ステップで可変させることが出来ます。(あと1本ふやせば64ステップになる)


 手持ちの 73種セット抵抗 でカバーすべく何度も何度も試算を繰り返した結果、超ベストな組み合わせが出ました。


 ずばり!

R1x R1y R1a R1b R1c R1d R1e
2.1k 2.7k 4.7k 10k 20k 47k 100k


 R1a を MSB(最上位)に、R1e を LSB(最下位)をにした組み合わせ(0:断 1:接)
http://dl.ftrans.etr.jp/?6011859c6330469cbfd6ecde1635ef869489028f.png

R1a R1b R1c R1d R1e Hex Vout
0 0 0 0 0 00 12.08
0 0 0 0 1 01 12.19
0 0 0 1 0 02 12.31
0 0 0 1 1 03 12.41














1 1 1 0 0 1c 14.82
1 1 1 0 1 1d 14.87
1 1 1 1 0 1e 14.93
1 1 1 1 1 1f 14.98

(注意) サイクルユース(充電電圧〜15V)向けに、高め電圧が指定できるようにしてます。スタンバイユースの人は 〜14V の範囲にして刻みが細かくなるよう抵抗値を見直したほうがいいと思います
追記(2012/06/20) 「超ベストな組み合わせが」って書きましたが、「超ベスト」ではありませんでした。詳しくは 6/20 の記事 に記載


 MSB→LSB の方向で値が概ね2倍になるように抵抗値を並べていくと、とても自然なステップになりました。
 物理に達者な方にかかれば「そんなの当たり前だろ」と言われるとは思いますが、私は総当たり的に試してみた結果から気がつきました。


 もっと複雑なステップ表になると思い込んでて、1)発電DCDC停止 2)抵抗の組み合わせと FB 地点の電圧測定を全パターンで実施 3)測定電圧でソートかけてステップ表を作成 という仕事をマイコンにさせようと NJM2367 への FB を横取りして電圧測定させようと思っていたのですが、そんな必要なくなりました。


http://dl.ftrans.etr.jp/?11054f26ac5341c7b6cdc6a72e171c818f32704a.jpg
追記(2012/06/20) この回路図も古いです、特に問題はありませんけど、カットアンドトライ後の回路は 6/20 の記事 のとおりです。


 最初の回路図では DCDC に NJM2367(最大5A) を使ってましたが、実際の組み立てにおいては、ピンも使い方も値段も全く同じである NJM2811(最大7.5A)を利用しました。
 また、出力側が MOSFET スイッチという汎用的な感じにしてありましたところ、私が予定している負荷は車載ルーターや若松ネットガイガーなど 5V 機器なので、5V を作るべく12〜15V → 5V にするため、MOSFET の代わりに NJM2367 置きましたが、汎用的に使う予定の人は、電磁式のリレーPch MOSFET にしときましょう。


http://dl.ftrans.etr.jp/?f3ac24812a8546cbbb6350faae9e171621444402.jpg http://dl.ftrans.etr.jp/?45549025b0384f9cab653d47733993341be4fdb5.jpg


 ソフトの関係の説明は次回に回しますが、簡単ながらも何とか動作する程度にはIVセンスと出力電圧ステップ指定の部分を作り込んでみました。
 ACS712 のゼロアンペア電圧を自己校正する仕組み、過充電防止、過放電防止も取り入れてあります。
(ただし mbed 自体で電気を食いつぶすことは想定外)


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 最初に組み上げたときは、激しいコイル鳴きのほか、入力電圧に関わらず 入力電流≒出力電流 という、まるで三端子レギュレータみたいな挙動を示してまして、暗澹たる思いに駆られたのですが、キャッチダイオード(回路図で NJM2811 の右側に上向きにあるやつ)に手持ちの怪しい 40V10A ショットキーを使ったのが悪かったらしく、SK54 という 40V5A 品に交換したところ超絶に絶好調になりました。
 ちゃんとデータシート読まずにテキトーに使ったのが悪かったのですが、たぶん 72kHz というスイッチング周波数に追いつけなかったのでしょう。


 DCDCセット品 には 3足ショットキー が付いてきますが、スイッチング目的には SK54 のほうが Vf も低くて高効率になるように思います。
 定格 5A な SK54 ですが、ここを通過する電流はパルスなので、少しくらい多めに電流ながしちゃっても平気でしょう。


 発電DCDC の、出力側V×I ÷ 入力側V×I が変換効率となりますが、私の回路図から分かりますとおり、バッテリー側の電流計(ACS712)は純粋にバッテリーへの充電量を測定する目的で設置されたもので、充電以外の負荷を測定していません。
 負荷が増えるとこの分がバッテリー側の電流計に現れないので「見た目の効率」が減って見えます。


 上の写真の右側は NJM2811 の実力を探るべく、100mA くらい消費する mbed の電気を三端子からではなく PC 給電にさせて、バッテリー側の電流計に現れない負荷を減らして測定させてみた結果です。
(電流計 ACS712 ×2の電気は三端子から得てます)


 瞬間値としては 97.8% などという驚異的な数値を示していますが、電圧測定に用いている分圧抵抗は誤差5%品を選別せずに使ってますので、実際にはもう少し少ないかもしれません。(逆に、もっと高い可能性も否定できないが・・・)
 そーいう条件下ではありますものの、概ね95%前後で、90%を割ることはない、という風で、「効率90%以上」と表現して良いレベルに到達してるのではないかと思います。


 たぶん、SK54 の功績が大きいように思いますので、NJM2367/NJM2811 で効率が上がらなくて困ってる方はキャッチダイオードの変更を検討なさってみて下さい。


 次回はソフトの話をしようと思ってます。


追記(2012/06/17)
 これに使う用で注文してた50Wパネルが届きました。
 安定化電源でシミュレーションしてたつもりでしたが、実際のパネルが相手では 32ステップ では刻みが粗すぎるようです。
 概ね 1ステップ で 0.1V くらい出力電圧が移動するのですが、ピーク付近ではこの1ステップ0.1V の移動でピーク点を大きく行き過ぎてしまいました。


 ピーク点ちょっと行き過ぎ気味の状態で、ピーカンとは言えない程度の空模様で発電量としては 25〜30W くらい。
 手応えとしては悪くはないものの、きちんとピークを捕らえれば +5W くらいは取れそうな予感。。


 合成抵抗づくりに、あと1本抵抗を増やすか・・・?
 足の多い mbed だから、3本追加して256ステップにしてしまうことも可能ではあるが、こんな方法でいいのか!?


 続報を書く予定です。 


追記(2012/06/20)
 抵抗を1本ふやして電圧可変を64ステップにし、パネルも実際に架設するなど、続きを書きました。